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モンツァとは正反対。バクー市街地コースがエンジンに強いる「全開と低速の繰り返し」

バクー市街地サーキットは、長大なストレートと旧市街の狭い区間が同居します。その結果 油温は上下を繰り返します。モンツァとの違いと、日常走行との構造的な共通点を解説します。

モンツァとは正反対。バクー市街地コースがエンジンに強いる「全開と低速の繰り返し」

バクー市街地サーキットで、F1第15戦アゼルバイジャンGPの決勝が今日9月26日に開催されます。ちなみに日本時間20時スタート、土曜日の決勝という珍しい日程です。

そして舞台となるのは、カスピ海に面したアゼルバイジャンの首都です。つまり一般道を閉鎖して走るコースです。

なお今月初めのモンツァを扱った記事では、全開率の高さが潤滑にとって過酷だという話をしました。ところがバクーは、その正反対の意味で難しいコースです。しかもその難しさは、実は私たちの日常走行と構造がよく似ています。

内部リンク:モンツァはなぜ潤滑にとって最も過酷なコースなのか →

外部リンク:https://www.formula1.com/en/racing/2026/azerbaijan

バクー市街地サーキットは、2つの性格が同居している

まずレイアウトは、性格の異なる2つの区間が組み合わさっています。

長大なストレート

ひとつは、カレンダーでも最長級の長いストレートです。そしてここで車速は、最高域まで達します。したがって各チームは、空気抵抗を減らした低ダウンフォース仕様を持ち込みます。

旧市街の狭いセクション

もうひとつは、城壁沿いの狭いセクションです。つまり道幅が極端に狭く、低速で通過する区間が続きます。しかも壁がすぐそこにあり、わずかなミスがレース終了に直結します。

要するにこの2つが、1周のなかで交互に現れる。つまりモンツァが「全開が続く」コースだとすれば、バクーは「全開と低速が交互に来る」コースです。

熱負荷が「変動する」ことの難しさ

そして高い熱負荷が一定に続く状態と、高い熱負荷と低い熱負荷が交互に来る状態。エンジニアにとって難しいのは、しばしば後者です。

なぜなら理由は冷却にあるからです。

低速区間では走行風が得られない

まずラジエーターやオイルクーラーに流れ込む空気の量は、車速に依存します。つまりストレートで高い熱を発生させ、その熱を処理しなければならない区間で、肝心の冷却風が不足する。したがってこの順序が厄介です。

低抵抗と冷却は相反する

さらにバクーでは、ストレートの最高速を狙って空気抵抗を削る方向でセッティングが組まれます。ところが冷却のための開口部を広げれば抵抗が増え、最高速が落ちます。要するに低抵抗の追求と冷却の確保は、基本的に相反します。

その結果、油温と水温は上昇と下降を繰り返すことになります。つまりオイルにとっては、高温に晒される時間が長いだけでなく、温度が振れ続ける環境ということになります。

バクー市街地サーキットがブレーキに厳しい理由

またバクーがブレーキに厳しいコースとして知られているのも、同じ構造から来ています。

具体的には最高速域からの強い減速が、1周のなかで繰り返されます。ところが制動で発生した熱を処理しなければならないのに、低速区間が続けば冷却風は十分に得られません。

そしてこの強い前後方向のGは、エンジン内部のオイルにも作用します。だからこそ競技車両は、ドライサンプ潤滑を採用します。なぜならオイルパンに油を溜める方式では、強いGで油が片側に寄り、ポンプが油を吸えなくなる瞬間が生まれる可能性があるからです。

2026年のマシンにとってのバクー市街地サーキット

さらに今シーズンからパワーユニット規定が刷新され、内燃エンジンと電動モーターの出力比率はほぼ同等になりました。同時に、走行中に回生できる電気エネルギーには上限が設けられています。

したがって長いストレートを持つコースは、この電気エネルギーの管理が難しくなります。 つまりストレート後半でエネルギーを使い切る状況にどう対処するか。今月のモンツァに続いて、バクーでもこの点が結果を左右する要素になります。

加えて、空気抵抗を削ったうえで走行中にウイングを動かすアクティブエアロが導入されています。そこで低抵抗を追求するコースでこれがどう機能するのか。これが今年ならではの見どころです。

これは、日常走行と同じ構造です

ところが、ここからが本題かもしれません。

「全開と低速が交互に来る」「低速区間では冷却風が得られない」 ——つまりこの2つの条件を読んで、思い当たることはないでしょうか。

要するにこれは、日本の日常的な走行そのものです。

たとえば高速道路を巡航して、インターを降りて渋滞にはまる。あるいは幹線道路で流れに乗って、信号で停まる。そして真夏の渋滞でエアコンをかけたまま停止している状態は、まさに「熱は発生し続けているのに走行風がない」条件です。

実際、以前の記事で高速道路の連続巡航より、渋滞や短距離走行の繰り返しのほうがエンジンオイルには厳しいという話をしました。つまり理由は同じ構造にあります。なぜなら油温が安定した領域に保たれる状態のほうが、オイルにとっては扱いやすいからです。

内部リンク:猛暑を走り切ったエンジンオイルに何が起きているか →

もちろんF1のマシンと市販車では、出力も回転数も材料もまるで違います。しかし「熱をどう処理するか」という問題の形は、驚くほど似ています。

したがってレースの現場で得られる知見が市販製品の開発に意味を持つのは、こうした構造の共通性があるからです。つまり極限条件でデータを取ることで、日常条件での設計にも手がかりが得られます。

内部リンク:レース用オイルと市販オイルは何が違うのか →

RAVENOLとモータースポーツ

RAVENOLは、ドイツ・ヴェストファーレンに拠点を置く潤滑油メーカーです。そして長年、モータースポーツの現場で製品を供給してきました。

なかでも2024年からはニュルブルクリンク24時間レースの冠スポンサーを務めています。ちなみにレースの正式名称は「ADAC RAVENOL 24h Nürburgring」です。さらに2026年5月の第54回大会では、メルセデスAMG・チーム・ラベノールの80号車 Mercedes-AMG GT3 Evo が総合優勝しました。

また2025年のル・マン24時間レースでは、Iron Lynx(Mercedes-AMG LMGT3)とProton Competition(Ford Mustang LMGT3)に製品を供給しています。

つまり耐久レースは、高い負荷が長時間続く環境です。したがって短時間のピーク性能だけでは足りず、安定性が同時に問われます。要するに市販製品に求められる性質と、最も近い場所にあるカテゴリでもあります。

内部リンク:なぜニュルブルクリンクなのか →

変動する熱負荷に、どう備えるか

そこで最後に、市販車の話に戻します。

本記事で見てきたとおり、厳しいのは高い油温そのものより、油温が上下を繰り返す状態です。しかも日本の日常走行は、まさにその条件にあたります。

加減速の多い使い方には

そしてRAVENOL HLS — High Lubrication Synto SAE 5W-30 は、加減速が激しいシビアコンディション下でも熱劣化を抑え、安定した油膜を維持する設計です。つまり本記事で扱った条件に、そのまま対応します。

なお承認としては、BMW LL-04およびMB 229.51 / 229.52の正式承認を取得しています。したがって輸入車オーナーにとっては、承認と性能の両方を満たす選択になります。

国産車であれば

一方RAVENOL SMO SAE 5W-30 は、API SQ / ILSAC GF-7Aの正式承認を取得した製品です。具体的には優れた熱酸化安定性を備え、幅広い車種に対応します。

ただし必ず自分の車の指定を確認してください。 なぜなら承認と粘度は、年式とエンジン形式で変わるからです。

内部リンク:

決勝は今夜20時です。