オイルの基礎知識

MB-Approval 229.51 / 229.52 とは ― メルセデス・ベンツのオイル承認の読み方

MB 229.51は、メルセデス・ベンツがシート番号で管理する承認のひとつです。229.3と 229.5の違い、SAPSを制限した229.31と229.51、そして229.52だけが持つ例外的な関係まで整理します。

MB-Approval 229.51 / 229.52 とは ― メルセデス・ベンツのオイル承認の読み方

MB 229.51、そして229.5。メルセデス・ベンツのオイルを選ぼうとすると、こうした表記に出会います。

ただし小数点以下が2桁になったり3桁になったりするため、慣れないと構造が見えにくい。しかし規則性はあります。

そして、ここまで扱ってきたフォルクスワーゲン、BMW、ポルシェとは明確に異なる特徴がひとつあります。

MB 229.51 が属するMB-Approvalという体系

まずメルセデス・ベンツは、潤滑油をはじめとする油脂類の要求仕様を、シート(Blatt)と呼ばれる番号で管理しています。そしてエンジンオイルに関するものが229系です。

つまりこれは業界団体の規格ではなく、メルセデス・ベンツが自社の試験を通過した製品に与える承認です。したがって承認を取得した製品は、メーカーが公開している承認品の一覧に掲載されます。

なおこの一覧が公開されているという点は、メルセデスの特徴のひとつです。 なぜなら製品名から承認の有無を確認できるため、「相当品」との区別がつけやすくなるからです。

内部リンク:粘度表示とメーカー承認規格の読み方 →

まず大きく2つに分かれます

そして229系の番号は、SAPSの制限があるかどうかで分かれます。

ちなみにSAPSは、硫酸灰分・リン・硫黄の総称です。もちろんオイルの清浄性や耐摩耗性を担う必要な成分です。ところが排気側に流れ込むと、DPFやGPFに灰分が堆積し、三元触媒の活性を低下させます。

系統性格
229.3 / 229.5SAPSの制限がないカテゴリ
229.31 / 229.51 / 229.52SAPSを制限したカテゴリ

つまり末尾に1桁足されている番号が、SAPSを制限した側だと理解すると見通しが良くなります。具体的には229.3に対する229.31、229.5に対する229.51という対応です。

内部リンク:ACEA規格の読み方 ― C1からC6まで →

229.3 と 229.5 の違い

確かにどちらもSAPSの制限がないカテゴリです。ただし229.5のほうが省燃費性能への要求が高く設定されています。なお粘度の想定も異なります。

そしてこれらは、後処理装置への配慮が必須ではなかった世代向けの番号です。したがってDPFやGPFを搭載した車両に使うカテゴリではありません。

229.31 と MB 229.51

一方こちらは、SAPSを制限したカテゴリです。つまりDPFやGPFを搭載した車両が対象になります。

そして日本で最も目にするのは229.51です。 実際、5W-30を中心に多くの製品がこの承認を取得しています。なお技術的にはACEAのC3に近い領域で、ミドルSAPSでありながら高温高せん断条件での粘度(HTHS粘度)を確保する設計です。

MB 229.51 と 229.52 は、例外的な関係を持ちます

ところが、ここがこの記事で最も重要な部分です。

まずこれまでこのブログでは、フォルクスワーゲンの504 00と508 00、BMWのLL-01とLL-04、ポルシェのA40とC30について、いずれも**「番号の大小は上位・下位ではない」**と説明してきました。

内部リンク:

しかしメルセデスの229.51と229.52は、この原則の例外にあたります。

すなわち229.52は、229.51の要求を満たしたうえで、省燃費性能と酸化安定性に関する追加の要求をクリアしたカテゴリとされています。つまり包含関係があるという、他のメーカーでは珍しい構造です。

したがって一般には、229.51が指定されている車両に229.52の承認を持つオイルを使用することは可能と案内されています。

ただし、逆は成立しません。 なぜなら229.52が指定されている車両に229.51のオイルを使うことは、要求を満たさないからです。

そしてこの関係がすべての車両で適用できるとは限りません。 したがって実際の適用可否は、取扱説明書とディーラーで確認してください。要するに「上位互換だから大丈夫」と一般化して覚えるのは危険です。

低粘度カテゴリ

さらに229.71のように、より新しい番号も存在します。そしてこれらは低粘度化による省燃費を狙ったカテゴリで、対象となるエンジンが限定されています。

なぜなら低粘度設計は、そのエンジンのクリアランスやオイルポンプの吐出量を前提に成立しているからです。したがって指定されていない車両に使うことは想定されていません。 つまり「燃費が良さそうだから」という理由で選ぶ対象ではありません。

なお229系の番号体系は、継続的に追加されています。 そこで自分の車の指定が何かを、番号の記憶ではなく取扱説明書で確認してください。

ASSYSTが示す整備時期の前提

またメルセデスは、走行条件をもとに次回の整備時期を算出する仕組みを備えています。具体的には車載ディスプレイに、次回サービスまでの残り距離や日数が表示されます。

もちろん便利な機能です。ただし押さえておくべき前提があります。

前提1:承認を満たすオイルが使われていること

まずこの算出は、指定された承認を満たすオイルが使われていることを前提にしています。 なぜなら長い整備間隔は、その期間にわたって性能を維持できるオイルがあって初めて成立するからです。

したがって承認を満たさないオイルを入れた状態で表示どおりに走らせるのは、根拠を欠いた運用になります。

前提2:日本での使い方は想定外の場合がある

もうひとつ、表示は日本での使い方に最適化されているとは限りません。

具体的には短距離走行の繰り返し、渋滞での低速走行、猛暑下でのエアコン常用。つまりこうした条件はオイルにとって厳しく、しかも走行距離の数字には現れません。

内部リンク:猛暑を走り切ったエンジンオイルに何が起きているか →

なお日本国内での推奨交換時期については、正規ディーラーの案内を確認してください。

自分の車の指定を調べる手順

そこで確認の順序です。

  1. 取扱説明書のエンジンオイルまたはサービス関連の項を開く
  2. 指定されているシート番号と粘度を確認する
  3. その承認を取得した製品から選ぶ

ただし同じモデルでも、年式とエンジン仕様によって指定は変わります。とくにガソリン、ディーゼル、ハイブリッドが併存するモデルでは注意が必要です。

したがって判断に迷う場合は、車台番号を伝えて正規ディーラーまたはメルセデスを扱う整備工場に確認してください。なぜなら車台番号があれば、その個体の正確な仕様が特定できるからです。

MB 229.51 に対応するRAVENOL製品

承認と推奨は分けて確認してください

まず製品情報には、「承認(Approval)」として記載されている項目と、「推奨・適合(Recommendation)」として記載されている項目があります。この2つは意味が異なります。

すなわち前者は自動車メーカーの試験を通過して承認一覧に掲載されているもの、後者は潤滑油メーカーが自社の判断で適合を表明しているものです。

そしてメルセデスは承認品の一覧を公開しているため、この確認が比較的とりやすいメーカーです。したがってTDS(製品技術資料)の記載とあわせて確認してください。

エンジンオイル:HLS SAE 5W-30

そのうえで、RAVENOL HLS — High Lubrication Synto SAE 5W-30 は、MB 229.51と229.52の両方の正式承認を取得しています。加えてBMW LL-04の承認も併せ持ちます。

ここで前章の内容を思い出してください。つまり229.52は229.51の要求を包含する関係にあります。したがって両方の承認を持つということは、より厳しい側の試験も通過しているということです。

さらに加減速が激しいシビアコンディション下でも熱劣化を抑え、安定した油膜を維持する設計です。

トランスミッションフルードも、同じ体系で管理されています

なお本記事の冒頭で、メルセデスが油脂類をシート番号で管理していると書きました。つまりエンジンオイルの229系だけではありません。 実際、トランスミッションフルードにも別のシート番号が割り当てられています。

そしてRAVENOLは、メルセデス向けに次の製品を用意しています。

  • ATF M 9-G … 9G-Tronic向けの合成ATF
  • ATF M 9-FE … 7G-Tronic NAG2FE+向けの合成ATF
  • ATF DCT-F3 … MB 236.25向けの合成DCTフルード

したがってエンジンオイルだけでなく、駆動系まで含めて選べます。

内部リンク: