ニュルブルクリンク24時間レースは、潤滑油メーカーにとって単なるスポンサー活動の場ではありません。つまりここは、世界で最も条件の厳しい試験場のひとつです。
ちなみに先週末の9月12日と13日、同じコースではNLS(ニュルブルクリンク耐久シリーズ)の第8戦と第9戦が2連戦として開催されました。なお次戦の第10戦は10月10日です。
そこで今日は、なぜこの場所なのかという話をします。
ニュルブルクリンク24時間レースの舞台となるコース
まずドイツ西部のアイフェル地方にある、1927年開場のサーキットです。そして北コース(ノルドシュライフェ)は全長20km以上あり、これに現代のグランプリコースを組み合わせたレイアウトでは、1周が24kmを超えます。つまり世界最長の常設レーストラックです。
ただし数字だけでは伝わりにくいので、言い換えます。要するに一般的なサーキットの4周分から5周分が、ここでは1周です。
さらにコースの起伏は激しく、上りと下りが連続します。しかもコース幅は狭く、それでいて24時間レースには200台を超える車両が参加します。
具体的には、ファクトリーのGT3マシンと、市販車ベースでアマチュアドライバーが操る車両が、同じコースを同時に走ります。 加えて照明はなく、夜間は各車のライトだけが頼りになります。
なお2026年の大会は、35万2000人という史上最高の観客動員を記録しました。
潤滑油にとって、ここが特別な理由
もちろんサーキットは数多くあります。ところが潤滑という観点から見たとき、ニュルブルクリンクには他にない条件が揃っています。
1周のなかで条件が激変する
まず24kmという長さは、1周のなかに複数の異なる性格の区間が含まれることを意味します。具体的には高速で駆け抜ける区間、低速で回り込むコーナー、長い上り、長い下り。
その結果、油温は上がったり下がったりを繰り返します。つまり一定の高温に晒され続ける状態より、温度が振れ続ける環境のほうが、設計上は厄介です。
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縦方向のGが強い
次に激しい起伏は、車両に強い上下方向の力を与えます。実際、路面のうねりで車体が浮くような場面もあります。
そしてこのとき、エンジン内部のオイルにも同じ力が作用します。だからこそ競技車両はドライサンプ潤滑を採用します。要するに油を別のタンクで管理することで、強いGがかかったときにポンプが油を吸えなくなる事態を避けているわけです。
24時間という時間軸
さらに、短時間のピーク性能だけでは足りません。なぜなら酸化、せん断による粘度低下、添加剤の消耗。オイルに起きる変化のすべてが、この時間のなかで現れるからです。
つまりこれは、市販車で交換インターバルを通じて起きることと質的には同じ現象です。要するに時間軸が圧縮されているだけです。
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混走という条件
また、プロが駆るGT3マシンと市販車ベースの車両が同じコースにいます。したがってペースの速い車両は、遅い車両を追い越すために減速と加速を繰り返します。
つまり全開の連続ではなく、全開と抑制が混ざる。 これも熱負荷が変動する条件です。
天候が読めない
しかも1周が24kmもあると、コースの一部だけが雨という状況が普通に起こります。 実際、路面温度も外気温も区間によって違います。したがって条件を固定できないということは、想定の幅を広く取らなければならないということです。
RAVENOLとニュルブルクリンク24時間レース
そしてこうした場所で、RAVENOLは2024年から冠スポンサーを務めています。ちなみにレースの正式名称は「ADAC RAVENOL 24h Nürburgring」です。
もちろん冠スポンサーという立場は、単にロゴが露出するということ以上の意味を持ちます。なぜならこのレースは2024年からインターコンチネンタルGTチャレンジの1戦にも組み込まれており、総合優勝を争うSP9クラスには世界中からファクトリー勢が集まるからです。
つまりそこに社名を掲げるということは、この場所で起きることに責任を持つ立場に立つということでもあります。
2026年、名を冠したチームが総合優勝
そして2026年5月16日から17日にかけて行われた第54回大会では、メルセデスAMG・チーム・ラベノールの80号車 Mercedes-AMG GT3 Evo が総合優勝を果たしました。
なおドライバーは、マーロ・エンゲル、ルカ・ストルツ、ファビアン・シラー、マキシム・マルタンの4名です。
要するにレースの名前にも、勝ったチームの名前にも、同じブランド名がある。したがって潤滑油メーカーにとって、これ以上分かりやすい形の結果はありません。
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NLSという日常
確かに24時間レースは年に一度の祭典です。ただしニュルブルクリンクには、もうひとつの顔があります。すなわち**NLS(旧VLN)**です。
具体的には4時間から6時間の耐久レースが年間を通じて開催され、グリッドには100台を超える車両が並びます。
そしてファクトリーチームにとっては新型車両の実戦テストの場です。一方ドライバーにとっては、24時間レースでGT3マシンを走らせるために必要な、北コースのライセンスを取得する場でもあります。
実際、ポルシェ、BMW、メルセデスAMG、アウディ。多くのメーカーにとって、ここは開発の現場です。
なお冒頭に触れたとおり、先週末の9月12日と13日には第8戦と第9戦が開催されました。ちなみに次戦は10月10日です。つまり年に一度の華やかな24時間レースの裏側で、このコースでは1年を通してデータが積み上がっています。
ここで得たものは、どこへ行くのか
もちろんレース用の製品と市販製品は、設計目標が異なります。なぜならレースでは短い周期で交換することを前提にできる一方、市販車では冷間始動から長期の使用まで、はるかに多くの制約を背負うからです。
したがって「レースで勝ったオイルだから市販車にも良い」という単純な話ではありません。
それでも、極限条件でデータを取ることには意味があります。つまり高温高せん断の環境で、設計どおりの粘度をどれだけ保てるか。 この問いは、レースでは1レース分、市販車では交換インターバル分という時間軸の違いはあっても、評価している性質は同じです。
内部リンク:粘度表示とメーカー承認規格の読み方 →
要するに24kmのコースで、起伏と混走と夜と雨のなかで24時間走らせる。そこで問題が出なかったという事実は、実験室では得られない種類の情報です。
ニュルブルクリンク24時間レースと地続きの製品
そのうえで、実際の製品を挙げます。
耐久環境で鍛えられたレーシングオイル
まずRAVENOL RUP — Racing Ultra Performance SAE 5W-40 は、GT4レースでの実戦採用実績を持つ製品です。そして製品説明にあるとおり、ニュルブルクリンクをはじめとする過酷な耐久環境で鍛え上げられています。
具体的には、高いせん断安定性を備えた設計です。つまり本記事の第2章で触れた「24時間のなかで現れる粘度低下」に対する答えが、この製品の設計思想にあたります。
市販ラインとの関係
ただし前章で書いたとおり、レーシングオイルをそのまま市販車に入れるべきではありません。 なぜなら設計目標が違うからです。
では何が共通しているのか。それはUSVO®という考え方です。すなわちベースオイルの粘度指数を高め、粘度指数向上剤の添加量そのものを減らすことで、せん断による粘度低下を抑える。この発想はレーシングラインにも市販ラインにも通底しています。
したがって日常的に乗る車であれば、SMO SAE 5W-30(API SQ / ILSAC GF-7A正式承認)やHLS SAE 5W-30(BMW LL-04・MB 229.51 / 229.52正式承認)が選択肢になります。
内部リンク:
つまりRAVENOLがこの場所にこだわる理由は、そこにあります。

