ポルシェのエンジンオイルを選ぼうとすると、「Porsche A40」「Porsche C30」「Porsche C20」「Porsche C40」といった表記に出会います。
ただしフォルクスワーゲンの504 00やBMWのLonglife-04と比べると、ポルシェの記号は構造が分かりやすいという特徴があります。なぜなら2つの情報しか含んでいないからです。
そこでこの記事では、その読み方を整理します。加えて、エンジンオイルとは完全に別に管理する必要があるPDKオイルについても触れます。
ポルシェのエンジンオイル承認は2つの情報で読める
まずポルシェの承認は、アルファベット1文字と数字2桁で構成されています。そしてそれぞれが、別の情報を持っています。
アルファベットはSAPS制限の有無
具体的には次のとおりです。
- A … SAPSの制限がないカテゴリ
- C … SAPSを制限したカテゴリ
ちなみにSAPSは、硫酸灰分・リン・硫黄の総称です。もちろんオイルの清浄性や耐摩耗性を担う必要な成分です。ところが排気側に流れ込むと、GPFに灰分が堆積し、三元触媒の活性を低下させます。
つまりCが付くカテゴリは、後処理装置を守るために成分を制限したものです。
内部リンク:ACEA規格の読み方 ― C1からC6まで →
数字は粘度グレードの目安
一方で数字は、対応する粘度グレードの目安を示しています。
- 20 … 0W-20クラス
- 30 … 5W-30クラス
- 40 … 0W-40、5W-40クラス
そしてこの2つを組み合わせると、次のように読めます。
| 承認 | SAPS | 粘度の目安 |
|---|---|---|
| A40 | 制限なし | 40グレード |
| C20 | 制限あり | 20グレード |
| C30 | 制限あり | 30グレード |
| C40 | 制限あり | 40グレード |
したがってVWやBMWの番号体系と比べると、規則性がある分だけ理解しやすい構造になっています。
A40 と C30 ― 世代の違いが表れている
実際に多く目にするのが、この2つです。
A40
まずA40は、SAPSの制限がないフルSAPS設計のカテゴリです。つまり後処理装置への配慮が必須ではなかった世代の、自然吸気を含むスポーツエンジン向けに位置づけられてきました。
そして制限がないぶん、清浄性や耐摩耗性に必要な成分を十分に配合できます。
C30
一方C30は、SAPSを制限したカテゴリです。具体的にはミドルSAPS設計で、技術的にはACEAのC系列に近い領域にあります。なお対象とされているのは、ディーゼルエンジン、V6エンジンを搭載するカイエン、そしてハイブリッドモデルです。
ただしこの2つは互換ではありません。 たとえばA40指定の車にC30のオイルを入れれば、粘度が設計と異なります。逆にC30指定の車にA40のオイルを入れれば、後処理装置の保護という前提が崩れます。
C40 という新しいカテゴリの意味
さらに近年のポルシェで登場したのが、C40です。
構造から読めば、**「SAPSを制限しながら、40グレードの粘度を確保する」**カテゴリということになります。つまりA40とC30のそれぞれが持っていた性格を、両立させるものです。
背景にあるのはGPF搭載
そして背景にあるのは、スポーツモデルへのGPF搭載です。
まず高出力エンジンには、高いHTHS粘度が必要です。すなわち高温高せん断条件での油膜保持力です。ところがGPFを搭載すれば、SAPSは制限しなければなりません。要するにこの2つを同時に満たす必要が生じた結果として、出てきたカテゴリだと理解できます。
したがって制限のなかで高い粘度と保護性能を確保する設計は、処方の難易度が高くなります。だからこそC40の承認を取得している製品は限られています。
なおC40は、ポルシェのスポーツモデルへの適用を意味する承認とされています。ただし対象となるモデルと年式は、必ず確認してください。
ポルシェのエンジンオイル指定は、モデル名では判断できない
つまりモデル名だけでは判断できません。 なぜなら同じ911でも、世代とエンジン仕様によって指定は変わるからです。しかもカイエンのようにガソリン・ディーゼル・ハイブリッドが併存するモデルでは、パワートレインごとに指定が異なります。
そこで確認手順は、他のメーカーと同じです。
- 取扱説明書のエンジンオイルまたはサービス関連の項を開く
- 指定されている承認と粘度を確認する
- その承認を取得した製品から選ぶ
したがって判断に迷う場合は、車台番号を伝えて正規ディーラーまたはポルシェを扱う整備工場に確認してください。なぜなら車台番号があれば、その個体の正確な仕様が特定できるからです。
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PDKオイルは、エンジンオイルとまったく別の話
ここからは別の話題です。そして、見落とされやすい領域でもあります。
まずPDKは、ポルシェのデュアルクラッチトランスミッションです。そしてこの機構に使われるオイルは、エンジンオイルとは完全に別物です。しかも一般的なATF(オートマチックトランスミッションフルード)とも異なります。
なぜ専用の油が必要なのか
なぜならPDKのような湿式デュアルクラッチ機構では、1種類の油が複数の異なる役割を同時に担っているからです。
- クラッチの摩擦制御 … 湿式多板クラッチが滑りながらつながる過程を制御する
- ギヤの潤滑 … 歯車の噛み合い部を保護する
- 油圧制御 … 変速機構を作動させる作動油として働く
- 冷却 … クラッチが発生する熱を運び去る
そしてこのうち最も難しいのが、摩擦制御です。つまりクラッチがつながる過程での摩擦特性が設計値からずれると、変速時のショックやジャダー(振動)として体感されます。
確かにエンジンオイルであれば、「摩擦は小さいほど良い」という方向があります。ところがクラッチを扱う油では、そうなりません。要するに適切な摩擦特性を精密に作り込む必要があるという点が、決定的に違います。
交換について
もちろんPDKオイルは、エンジンオイルほど頻繁に交換するものではありません。しかし交換が不要な油ではありません。 したがって交換時期は、ポルシェの指定に従ってください。
そして指定を外した油を使うリスクは、エンジンオイル以上に大きい領域です。なぜなら摩擦特性は製品ごとに設計されており、代用が利かないからです。つまり変速フィーリングの違和感は、油の選択が原因である場合があります。
ポルシェのエンジンオイルとPDKフルードの製品
承認と推奨は分けて確認してください
まずポルシェの承認は、取得している製品が他のメーカー承認より限られる傾向があります。とくにC40のように、SAPS制限と高い粘度保持を同時に求めるカテゴリでは、その傾向が強くなります。
したがって製品を選ぶ際は、TDS(製品技術資料)で承認の取得状況を確認してください。すなわち承認(Approval)として記載されているのか、推奨・適合(Recommendation)として記載されているのか。この2つは意味が異なります。
PDKフルード
そのうえで、RAVENOL ATF PDK はポルシェのPDK向けに設計された全合成低粘度DCTフルードです。
なお容量は20Lです。ただしPDKは油量が多く、交換作業自体も専門的です。つまり個人でDIY交換する種類の油ではありません。 したがってポルシェを扱う整備工場や、取扱店にご相談ください。
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