製品・技術情報

USVO®とは何か ― 粘度が落ちないオイルの作り方

USVO®はRAVENOLが開発した潤滑油技術です。なぜマルチグレードオイルは粘度が落ちるのか、 そしてUSVO®は何をどう解決しているのか。ベースオイルとスター型ポリマーの2つの方法を解説します。

USVO®とは何か ― 粘度が落ちないオイルの作り方

こんにちは、RAVENOL JAPANです。

この記事では、RAVENOLが開発した技術、USVO®(ユーエスブイオー)をご紹介します。オイルにあまり詳しくない方にも分かるように、ていねいに説明します。

先に、ひとことでまとめます。

USVO®は、使っているうちにオイルのねばり(粘度)が落ちにくくするための技術です。 名前は Ultra Strong Viscosity Oil の略です。

RAVENOLには、もうひとつCleanSynto®という技術があります。この2つは、役割が違います。

  • USVO® … 粘度の技術。オイルのねばりが落ちにくいこと
  • CleanSynto® … 清浄性の技術。エンジンの中が汚れにくいこと

1つの製品に両方が使われていることもあれば、片方だけのこともあります。この記事では、USVO®のほうを説明します。

内部リンク:CleanSynto®とは →

外部リンク:RAVENOL本社(ravenol.de)のUSVO®技術ページ

粘度って、何のこと?

「粘度」とは、オイルのねばり具合のことです。

水とハチミツを思い浮かべてください。水はさらさら、ハチミツはどろっとしています。粘度が低いのが水、高いのがハチミツです。

そしてオイルは、温度で粘度が変わります。 冷えるとハチミツのように固くなり、温まると水に近づいていきます。

エンジンの中は、冷え切った朝と、真夏の渋滞で熱くなったときとで、温度が大きく違います。それでもオイルには、どんな温度でも、ちょうど良いねばりを保ってほしいわけです。

内部リンク:粘度表示とメーカー承認規格の読み方 →

オイルの粘度は、走るうちに落ちていきます

「5W-30」のようなオイルは、寒いときはさらさら、温まってもしっかりねばるように作られています。これは簡単なことではありません。

よくある方法は、ポリマーを足すこと

そこで多くのオイルには、粘度指数向上剤というポリマーが入っています。温度が上がると、この成分が広がって、ねばりが落ちるのを補ってくれる仕組みです。

ただ、ここに弱点があります。

ポリマーは、長い鎖のような形をしています。エンジンの中でピストンや軸受けに強く押しつぶされるうちに、この鎖がちぎれてしまうことがあるんです。そして、一度ちぎれた鎖は、元には戻りません。

その結果、オイルのねばりが、そのまま下がりっぱなしになります。これを「せん断による粘度低下」と呼びます。

見た目には分かりません

オイルの量は減っていない。色も普通。それなのに、高温での油膜を保つ力だけが落ちている。そんな状態が起こり得ます。

だからこそ、使い始める前の設計の段階で、手を打っておく必要があります。

内部リンク:猛暑を走り切ったエンジンオイルに何が起きているか →

USVO®は、2つの方法で、この問題に取り組んでいます

USVO®は、高温でも低温でも、粘度を安定させるためにRAVENOLが開発した技術です。そのために、高品質な全合成ベースオイルと添加剤だけを使います。

そして製品や粘度に合わせて、次の2つの方法を使い分けています。

方法① ベースオイルと添加剤の組み合わせだけで作る

高品質な全合成ベースオイルと、選び抜いた添加剤を組み合わせることで、ポリマーの増粘剤を使わずに、狙った粘度の特性を作る方法です。

ちぎれる鎖が、そもそも入っていません。いちばん根本的な方法です。

方法② 丈夫な「星型ポリマー」を使う

ただ、ベースオイルの成分だけでは、すべての粘度グレードの規格に収まるとは限りません。調達や保管のコストが高く、経済的に成り立たない場合もあります。

そこでRAVENOLは、星型(スター型)のポリマーを使います。

一般的なポリマーは、長い鎖のような形です。それに対して星型は、中心から腕を広げた、ヒトデのような形をしています。この形が、押しつぶされても、ちぎれにくいんです。

利点はもうひとつあります。一般的なポリマー(OCP)に比べて、必要な量が大幅に少なくて済むことです。

ポリマーは、少ないほうがいい理由があります。入れる量を間違えると、エンジンの汚れが増えて燃費が悪くなったり、塗膜のような堆積物ができたりすることがあるからです。ポリマーが少ないほど、その弱点も小さくなります。

どちらの方法でも、狙いは同じです。ちぎれやすいものを、減らす。

USVO®が目指している、6つの良さ

RAVENOLは、USVO®に次の6つの特徴を持たせることを目指しています。

① 高温でも、油膜を保ちやすい

エンジンの中でいちばん過酷なのは、高温で強く押しつぶされる状態です。この状態での油膜の頑張りを表すのがHTHS粘度(150℃)です。

USVO®は、運転中のせん断による粘度低下が小さく、油膜が保たれやすいことを目指しています。

② 寒い朝でも、さらさら流れる

エンジンをかけた直後は、まだオイルが隅々まで届いていません。この数秒間が、摩耗が進みやすい時間帯です。

USVO®は、-30℃でも流れやすく(CCS)、寒い朝の始動直後から潤滑できることを目指しています。

③ 酸化に強い

オイルは、熱と空気にふれると、少しずつ酸化していきます。酸化が進むと、泥のような汚れ(スラッジ)の原因になります。

USVO®は、酸化に強い設計です。オイルが長持ちし、汚れの発生を抑えることにつながります。

④ 蒸発して減りにくい

エンジンの熱で、オイルは少しずつ蒸発します。USVO®は、蒸発しにくい設計なので、オイルの量があまり減りません。

蒸発が少ないということは、排出されるガスも少ないということでもあります。

⑤ 温度が変わっても、ねばりが変わりにくい

これを表すのが粘度指数です。高いほど、温度の影響を受けにくいオイルです。USVO®の製品は、この数字が高くなっています。

⑥ 低い温度でも、固まらない

オイルは、冷やしていくとやがて流れなくなります。その温度を流動点と呼びます。USVO®の製品は、この温度がとても低くなっています。

この6つが組み合わさることで、高温でも、強い力がかかっても、安定した厚い油膜が保たれる。これが、USVO®が目指している姿です。

数字で見る、USVO®採用製品

実際の製品の数字を、見てみましょう。USVO®とCleanSynto®の両方を採用している3製品です。

項目VMP 5W-30DXG 5W-30DFE 0W-20何を表す?
粘度指数(VI)171163158温度が変わっても硬さが変わりにくいか
HTHS粘度(150℃)3.73.252.78過酷な状況での油膜の頑張り
Noack蒸発量6.4%6.0%5.9%熱でどれだけ蒸発して減るか(低いほど減りにくい)
低温粘度(CCS)4,740(-30℃)3,990(-30℃)5,400(-35℃)寒い朝の流れやすさ(低いほど流れやすい)
流動点-54℃-57℃-63℃固まって流れなくなる温度

これらはすべて、製品ごとに公開している技術資料(TDS)の測定値です。 気になる方は、ご自身の目で確かめてください。

同じ粘度グレードで、RAVENOLの製品どうしを比べると

USVO®を採用していない製品と並べると、違いが見えてきます。同じ5W-30どうしで比べました。

項目HLS(CleanSynto®のみ)VMP(USVO®+CleanSynto®)
HTHS粘度3.683.7
粘度指数166171
Noack蒸発量8.9%6.4%
低温粘度(CCS -30℃)6,1874,740
流動点-39℃-54℃
項目SMO(CleanSynto®のみ)DXG(USVO®+CleanSynto®)
HTHS粘度3.163.25
粘度指数162163
Noack蒸発量9.6%6.0%
低温粘度(CCS -30℃)5,7003,990
流動点-39℃-57℃

どちらの組み合わせも、USVO®の製品のほうが、蒸発しにくく、低温で流れやすく、固まりにくい数字です。

ただし、数字だけで製品の優劣は決まりません。 たとえばHLSには、GMやオペルの承認があります。車が指定する粘度と承認に合うかどうかが、選ぶときの一番の基準です。

内部リンク:

USVO®を採用している製品

USVO®は、特定の1製品だけの技術ではありません。エンジンオイルから、ギアオイルまで広がっています。

製品粘度こんな車に
VMP5W-30VW・アウディ・ポルシェ・BMW・メルセデスなどの欧州車
DFE0W-200W-20を指定するガソリン車、ハイブリッド車
DXG5W-30ガソリン直噴エンジンの車
REP / RUP / RRS5W-30 / 5W-40 / 5W-50サーキットを走る方向けのレーシングライン
RHP / Racing Gear75W-90 / 75W-140MTやLSD内蔵のデフ向けのギアオイル

USVO®を採用しているエンジンオイルの多くは、PAOをベースにした全合成油です。

エンジンの中だけの話ではありません。MTやデフのギアオイルでも、高温での油膜と、せん断への強さは同じように問われます。

製品を選ぶときは、まず取扱説明書で、車が指定している粘度と規格・承認を確認してください。

比べるなら、「交換直後」ではありません

ここまでの話から、ひとつ言えることがあります。

オイルを比べるべきタイミングは、入れた直後ではありません。 新品のときは、どの製品もカタログどおりのねばりを持っているからです。

差が出るのは、交換までの終盤です。数千キロから数万キロを走って、せん断を受け続けたあとで、どれだけ設計どおりのねばりが残っているか。USVO®が目指しているのは、そこです。

こんな使い方をしている車ほど、違いは出やすくなります。

  • 渋滞での低速走行やアイドリングが多い
  • 短距離走行を繰り返している
  • 高い負荷で走ることが多い
  • 交換間隔が長い車に乗っている

内部リンク:長距離ドライブ後の点検 →

USVO®に「できないこと」

過剰な期待を持たれないよう、限界もお伝えします。

オイルの交換が、いらなくなるわけではありません。 USVO®が守るのは、主に粘度です。オイルは、使い続ければ酸化し、汚れを抱え込んでいきます。指定された交換時期は、守ってください。

粘度そのものが高くなるわけでもありません。 0W-20は0W-20のまま、5W-30は5W-30のままです。その粘度が、落ちにくいということです。

エンジンの汚れを防ぐ技術でもありません。 それはCleanSynto®の役割です。だから、粘度の安定が特に大切な製品には、両方を組み合わせています。

粘度や承認が合わないオイルを、技術だけで選ぶのも正しくありません。 取扱説明書の指定が、いつでも最優先です。

まとめ

USVO®は、粘度が落ちにくいオイルを作るための、RAVENOLの技術です。

  • ちぎれやすいポリマーを、使わない、または少なくする
  • 高温でも低温でも、粘度を安定させる
  • 蒸発しにくく、低温で流れやすく、固まりにくい

交換のときだけでなく、走り続けたあとの、終盤の状態を大切にした設計です。

USVO®を採用した製品に興味のある方は、VMP・DXG・DFEをご覧ください。 どの製品が合うかは、取扱説明書の粘度と規格で決まります。

迷ったときは、「車種からオイルを選ぶ」をお使いいただくか、お気軽にお問い合わせください。 私たちが、お車に合うオイルをいっしょに探します。

内部リンク: