USVO®(Ultra Strong Viscosity Oil)は、RAVENOLが開発した潤滑油技術です。そして目的は明確で、高温でも低温でも粘度を安定させることにあります。
ただしこの説明だけでは、何がすごいのか伝わりません。なぜなら「粘度が安定する」と聞いても、そもそもオイルの粘度が落ちること自体を知らない方が多いからです。
そこでこの記事では、まず問題のほうから説明します。
そもそも、なぜ粘度は落ちるのか
まず「5W-30」のようなマルチグレードオイルは、低温での流動性と高温での粘度保持を両立させたオイルです。
ところが、この両立は簡単ではありません。というのは油は本来、温度が上がれば柔らかくなり、下がれば硬くなるからです。
一般的な解決方法:ポリマーを足す
そこで多くのオイルは、粘度指数向上剤と呼ばれるポリマーを添加します。つまり温度が上がると分子が広がって粘度の低下を補う、という仕組みです。
しかしここに問題があります。
なぜならポリマーは、軸受けやピストンリング周辺の強いせん断力を受け続けると、分子鎖が切断されるからです。そして一度切れた鎖は、元に戻りません。したがって粘度は永久的に低下します。
これをせん断による永久粘度低下(パーマネントシアーロス)と呼びます。
見た目には分かりません
しかも厄介なのは、この変化が外から見えないことです。つまりオイルの量は減っておらず、色も普通で、それでも高温での油膜保持力だけが落ちているという状態が起こり得ます。
内部リンク:猛暑を走り切ったエンジンオイルに何が起きているか →
USVO®は、この問題を2つの方法で解いています
そこでRAVENOLが採用しているのが、USVO®という考え方です。ちなみに製品や粘度グレードによって、次の2つのアプローチが使い分けられています。
方法1:ベースオイル自体の性能で作る
まず高品質な全合成ベースオイルと、選び抜いた添加剤の組み合わせによって、ポリマー増粘剤を使わずに目標の粘度特性を実現する方法です。
つまり切れる対象がそもそも存在しません。したがって、これが最も根本的な解決になります。
なおRAVENOLの主要製品がPAO(ポリアルファオレフィン)ベースを採用しているのは、この方針と直結しています。というのはPAOは粘度指数が高く、低温流動性と高温安定性を両立しやすいからです。
内部リンク:レース用オイルと市販オイルは何が違うのか →
方法2:スター型ポリマーを使う
ただしベース成分だけでは、すべての粘度グレードでSAE規格を達成できるわけではありません。しかも調達と保管のコストが高く、経済的に成立しない場合もあります。
そこでRAVENOLは、特殊なスター型(星型)ポリマーを使います。
一般的な粘度指数向上剤は、鎖状のオレフィンコポリマー(OCP)です。一方でスター型は、中心から放射状に腕が伸びた構造を持ちます。そしてこの構造が、高いせん断安定性を生みます。
さらにもうひとつ利点があります。すなわち標準的なOCPと比べて、必要な量が大幅に少なくて済むという点です。つまり切れる対象そのものが減ります。
要するにどちらの方法でも、目指しているのは「せん断で切れるものを減らす」ことです。
USVO®が実現している2つの数値
そして結果として、RAVENOLは次の2点を挙げています。
高温側:150℃でのHTHS粘度
まず運転中のせん断損失がほとんどなく、油膜が継続的に維持されるという点です。
ちなみにHTHS粘度とは、150℃・高せん断条件で測定される粘度で、油膜が最も薄くなる状況での保持力を示します。近年はこちらのほうが、実質的な意味を持ちます。
内部リンク:粘度表示とメーカー承認規格の読み方 →
低温側:-30℃でのCCS
一方こちらは、低温クランキング粘度です。つまり常に流動できる状態を保ち、冷間始動時でも各部への潤滑が確保されるということです。
なお冷間始動の直後は、油圧が立ち上がるまでの短い時間に摩耗が集中しやすい局面です。したがって低温側の性能は、日常的な使い方ほど効いてきます。
だから、比較すべきは「交換直後」ではありません
ここまでの話をまとめると、ひとつの結論が出てきます。
すなわちオイルを比較すべきタイミングは、入れた直後ではありません。 なぜなら新品の状態では、どの製品もカタログどおりの粘度を持っているからです。
差が出るのは、交換インターバルの終盤です。
つまり数千キロから数万キロを走り、せん断を受け続けたあとで、どれだけ設計どおりの粘度を保っているか。そしてUSVO®が狙っているのは、まさにこの領域です。
したがって、次のような使い方ほど差は現れやすくなります。
- 渋滞での低速走行やアイドリングが多い
- 短距離走行を繰り返している
- 高負荷での走行が多い
- 交換インターバルが長い車両に乗っている
内部リンク:長距離ドライブ後の点検 →
USVO®を採用している製品
なおUSVO®は、特定の1製品の技術ではありません。つまりエンジンオイルからギアオイルまで、幅広く展開されています。
エンジンオイルでは、たとえばVMP SAE 5W-30、DXG SAE 5W-30や、レーシングラインのREP 5W-30・RUP 5W-40・RRS 5W-50が該当します。
ギアオイルでも同様です。具体的にはRHP Racing High Performance Gear SAE 75W-90やRacing Gear 75W-140が、PAO全合成とUSVO®を組み合わせています。
つまりエンジン内部だけでなく、駆動系でも同じ課題に向き合っているということです。というのはMTやLSD内蔵のデフでも、高温下での油膜保持とせん断安定性は同じように問われるからです。
そして製品を選ぶ際は、自分の車が指定している承認や規格を必ず確認してください。 なぜなら技術が優れていても、指定に合わない製品では意味がないからです。
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